登録販売者を目指してドラッグストアでバイトを始めたけど3ヶ月で辞めた話
大学1年生で休学し、2年生で復学したものの1日で退学を決意。その後も2ヶ月程ニート生活を送っていたが、高校生の時から少し関心のあった「登録販売者」の資格を取得しようと思い立った。
過去記事:Fラン大中退ニートが登録販売者を目指す
そして試験勉強の傍らドラッグストアでアルバイトとして働き実務経験も積むことに。今思い返せば勤勉さに敬礼したくなるが、これが後に仇となる。
1度目のアルバイト応募は面接で不合格。2度目は誰でも聞いたことがある大手ドラッグストアにHPから応募した。面接当日その場で合格。初めてのアルバイトということもあって感極まって泣き崩れた(心の中で)。晴れて登録販売者の卵として、社会の一員として、ニートを卒業した瞬間であった。
これからドラッグストアのアルバイトで経験したことを語るが、あくまでお豆腐メンタル引きニート体質の社会不適合者の経験から、辛かったことを語るだけだ。ドラッグストア店員、登録販売者を目指して意気込んでいる良い子はどうか気を落とさないでほしい。
僕が働いたドラッグストアは朝9時〜夜12時まで営業している郊外型(日用品〜食品まで扱う1店舗として独立している典型的なドラッグストア)の店舗だ。
仕事内容は
・レジ打ち
・品出し
がメインで細かいものだと
・食品の賞味期限チェック
・清掃
・前出し(商品整理)
といった具合だ。
一見誰でもできそうな内容に見えるが、これは大きな罠、視覚トリックとも言えるまさに巧妙な罠なのである(ニートにとって)。
まずレジ打ち。働いたことのない僕には商品をスキャンするだけの単調な作業だと思っていたがこれもトラップなのだ。これはバイトにやらせるような仕事じゃない。お上は声を大にしてこういう。
「レジはお金を扱う責任重大な業務だ!緊張感をもつように!」
そう、責任重大なのだ。そのくせそれをニート上がりの社会不適合者にやらせるのだ。無論、僕はレジでミスを連発した。客から余分な金を受け取ってしまったり、クレジットカード利用時の会社控をレシートと一緒に客に渡してしまったり、化粧品のテスターを客に売ってしまったり。
そして品出し。一見楽そうだ。客と関わらずに商品を陳列すればいい。しかしこれも大きな落とし穴なのだ。
ドラッグストアは常にレジを埋めない。そんな人件費はもちろんないのだ。僕の職場では3つのレジがあったが1人が基本、多くても2人がスタンバイする。では混んだとき、残りの空いたレジは使わないのかというともちろん使う。お客様第一。空いたレジに入るのは品出しをしているバイトである。「レジの解放お願いします」のアナウンスがかかればすぐに作業を中止し走ってレジまで向かう。忙しい時は走りっぱなしだ。そうして品出しに時間がかかれば遅いと言われる。
品出しのもう一つの穴、それは客と関わらなくてもいいという誤解。売り場にいる以上頻繁に客から声がかかる。商品の場所、説明、在庫の有無を尋ねられる。もちろん新人バイトにはほぼ答えられない。答えられないプレッシャー、少々お待ちくださいといって客を待たせるプレッシャー。他の従業員に客の案内をパスするとしよう。他の従業員を探さなければならない。客が待っている、早くしないと。店長がいた!いや、まて、他の客の相手をしているからだめだ。早く。あ、副店長だ!とここでまた他の客に商品の場所を尋ねられる。同時に2人なんて処理できない。どうしよう。頭が真っ白。アウト。なんとか切り抜けたとしよう。副店長を客の元に連れて行く。あちらのお客様です!って、あれ、客がいない。ここで待てと言ったのに。どんな客だっけ。顔を覚えていない。アウト。
心に余裕がある人間はいいだろう。でもこれを読んでこんな時どうするべきかすぐに思いつかなかった人。果たしてバイトでこのプレッシャーに耐えられるだろうか。
とにかく自分に接客業は向いていないと痛感した。すべての業務を正確にこなし、かつ、客を第一に優先して行動する。スピードと正確さ、客への配慮を同時に求められるのだ。さらにはバイトなら目上の従業員にも気を使わなければならないし最低だ。
ニートがアルバイトで働けばフリーターということになるが、フリーターは使い倒される。時間があるために学生バイトよりも期待される。店長から「今は人手不足でバイトの〜くんも使い物にならないから君を優先して育てて行くから!」と言われたとき、客と店のプレッシャーに挟まれて押し潰された。そんなに期待してんなら正社員にしてくれよ!たかがバイトに期待なんかするんじゃねえクソ店長!と言ってやりたかった。僕も使い物にならないと言われる恐怖を感じた。
これが登録販売者として、正社員として働いたらどうなるのだろう。責任はより重くなる。店長副店長は深夜まで朝まで店が閉まってからも働いていた。こんな仕事できるだろうかいやできねえよ!
従業員はいい人ばかりだった。屈託のない笑顔で優しく教えてくれたパートの主婦。頼みごとも嫌な顔せず聞いてくれた副店長。バイト終わりにアイスを奢ってくれた店長。
けれど精神は限界だった。むしろ意地悪なパートのおばさんばかりで、最低な店長で、ブラックな職場だったとしよう。僕は気持ち良く辞めることができただろう。職場がクソだから辞めるのだ。自分はなにも悪くなかったと。しかし職場は大手というのもあって給料はしっかりとでるし、休憩もとれ、シフトも窮屈にならないよう調整される。ホワイト。真っ白。これで辞めてしまったら悪いのは自分だ。自分が社会不適合者だと認めることになる。やらなければ。登録販売者にならなければ。
バイトを始めて3ヶ月目のある日。いつも通り自転車に乗って職場に向かっていたが、気づけばカラオケで歌っていた。携帯の電源は切っていた。
それ以降登録販売者の勉強も全くやる気になれなかった。そして試験すら受けに行かなかった。ドラッグストアバイトなどしなければ登録販売者試験に合格していただろうか。
また振り出しに戻ってしまった。
ただ、ドラッグストアでのバイト経験は無駄ではなかった。バイトは誰でもできるものだと思っていたし、販売業なんて楽な仕事だと思っていたが、想像以上にハードであることを知った。僕はニートになるべくして生まれた人間なのだと確信を持てたのである。
なお健常者であれば問題なくできる仕事なのでやる気をなくさないで欲しい。ニートでも受験資格があり、普通の年収が目指せる優良資格だ。資格取得前にドラッグストアでバイトをしてみるのも手だが、辛いとモチベーションが維持できなくなるし、なによりドラッグストアでバイトをしたからといってすべてのドラッグストアや登録販売者として従事する職場が同じような場所とは限らない。特にニートやメンタル弱者は資格取得前に心が折れる可能性があるため、バイトはせず夢と希望に胸を膨らませながら日々の勉強だけに集中することをおすすめする。
過去記事:Fラン大中退ニートが登録販売者を目指す