ニートがリサイクルショップバイトを2週間で辞めた話
ドラッグストアでのアルバイト以降、まともな仕事をしていない時期が数ヶ月続き、貯金が底をついた。
いくら引きニートとは言え、手元に一銭もないのは困るので、重い腰をあげて求人サイトを漁った。
そしてツタヤとリサイクルショップの2つに応募し、どちらも無事面接が決まった。
ツタヤの面接では長所と短所をきかれ、応えを用意していなかった僕は、短所はコミュニケーションが不得意なことですとバカ正直に応えて無事不合格。
リサイクルショップでは20分ほど長々と質問をされ、コミュ障っぷりを遺憾無く発揮したつもりだったが合格だった。
業務内容に関しては、ほとんど覚えるまでもなく辞めてしまったので、初歩的な業務しか担当しなかった。
基本的には掃除とレジ打ちをさせられた。
リサイクルショップ特有の業務は割と楽しかった。古着は、値札付けをして、埃を飛ばし、ハンガーにかけて品出し。バッグは、同じく値札付けをして、なかに丸めた新聞紙をつめて品出し。など。なんだか、アパレル店員にでもなったかのようでうれしかった。
作業がわりと工場の生産のようで、単調で、単純で、これは長く続きそうだとおもった。
ただレジ打ちが少し面倒だった。普通の販売と違い、中古品を扱う為、商品にバーコードがない。レジにいちいち値段を打ち込んでいかなければならず、まあ色々と細かいミスをした。
そして客が意外にも多い。リサイクルショップなんてものは、メルカリのような所謂フリマアプリの台頭でオワコンだと思っていたが、来客は頻繁で、挨拶がしんどかった。
職場の人間は皆いい人だった。店長は根暗だったが、親切に仕事を教えてくれた。小太りのアラサー女はおしゃべりだったが、優しく接してくれた。そして若い女の子も何人かいて士気も上々。同世代の大学生たちも大人しく人当たりが良かった。
100点満点の職場だった。やっと居場所を見つけたと思った。
バックれた。
出勤時間間際になっても布団の中から出られなかった。あと30分後に店に立っている自分が想像できなかったのだ。
一旦、行こうかどうか悩み出すともうダメだ。職場のほんの些細なことが気になって嫌になってくる。自転車で15分の微妙な距離も、作業でやけに手が乾燥してカサカサになる事も、閉店後の掃除機かけが結構めんどくさい事も、同僚の身長がみんな大きくて自分の低身長が際立つ事も、立ち仕事で足が冷える事も、業務中に鏡に映った自分をみると制服が死ぬほど似合っていない事も、最近彼女にフラれた事も、全部全部嫌になる。
布団からじっと時計をみつめ、罪悪感とも開放感ともいえないような感情を抱きながら、出勤時間が過ぎたのを確認し、布団に潜り込み、むず痒い思いをして、爆睡した。
電話は無視をしていたが、翌日にメールが来ていた。
給料はいらないと一歩引けば見逃してくれるだろうと高を括っていたが、社会はそう甘くなかった。この後も執拗に辞めさせられないとメールが来た。無視していたら挙句には家に行くと脅迫まがいのメールが送りつけられて来た為、焦って馬鹿な返信をしてしまった。
ゲイともあれば、さすがに辞めさせられると思い、咄嗟にとんでもない嘘をついてしまった。
しかしかえって事態を大事にしてしまったようだった。この後はなんだか恐ろしくなりメールは全て無視した。
このメールを最後になにも連絡はなかった。家には来なかった。
給料はしっかり支払われた。
返すこともできず部屋の隅に置いてある制服のシャツが、心なしか悲しげに映った。
完全にバックれ癖がついてしまった。
つくづく社会に適合するセンスがないことを痛感した。
今のところはお年玉と成人のお祝いでなんとかお小遣いを手に入れることができ、なんとか元気にやっている。というよりこれでも成人なのだから自分でも驚きだ。
お小遣いは大切に使いながら、また次なるアルバイトをゆっくり探していこうと思う。